はじめは、目を疑った。
ほんの一時期的な、きまぐれなのだろうと思った。
しかし、その発言が撤回されることはなかった。
「Metal Shockは解散します」
2ヶ月に1度、ひたすら爆音でメタルを流し、みんなで暴れるというDJイベント。
その開催が、今回をもって最終回だというのだ。
最近予定が重なっており、ようやく久しぶりに足を運べると思った矢先のできごとであった。
いつもどおり、開始直前にお店に入る。
最終回なので人でごった返しているかと思いきや、意外にも人数が少ない。
どうやら、別の場所でライブ等が重なっていたようだ。
でも、これがいつもの光景である。
やはり、メタルは爆音で聴くと心地よい。
爆音だと、ふだん家で聴くより、ベース音などがはっきり聴きとれるのだな、と今さらながら気がつく。
そう聴き入っていると、いつしか人が増えている。
これも、いつもの光景である。
時間が経つにつれ、イベントが「最終回」であることも、いつしか忘れてしまう。
最終回だからといって、選曲が特別変わるでもなく、特別なことをするでもない。
ただ会場に広がるのは、いつもの光景である。
とはいえ、自分の中では、「最終回」を意識していた部分もある。
もともと3時間半のイベントが今年に入り1時間延長されたとき、正直ちょっと長いと感じた。
どうしても、途中で体力がもたなくなったのだ。
にもかかわらず、今回に至っては、バテることまで最後まで参加できた。
解散の理由は、結局最後まで明かされることはなかった。
誰もが気になる部分である。
が、逆に理由は知らないほうがいいのではないだろうか。
理由を聞いたからといって、イベントが再開されるわけでもないし、もしかすると耳をふさぎたくなることなのかも知れない。
主催者のお2人は、今後とも個別に活動し、お互い別の場所でまたDJを続けるのだそうな。
もちろん、それぞれのイベントも参加したいな、とは思う。
が、やはりMetal Shockの独特な雰囲気が居心地がよく、好きであった。
Metal Shockの常連さんたちの顔は、だいたい覚えている。
にもかかわらず、ほとんど言葉を交わしたことはない。
これは、メタルという音楽は好きであるが、知識がともなっていないため、会話が続かないのでは、という僕自身の意識が強い。
なので、ひとりでしっぽり暴れるというスタイルをとっていたのだが、それを容認し受け入れてくれていた。
それにしても、5年間ずっと続いていたというのだから、すごい。
ただ会場をおさえるだけでなく、ライブ会場などでのフライヤー配り等の広報活動をまめにしていたのだ。
やがて、常時30人以上の参加者を集め、多くのバンドからも信頼を得たことは、お2人の並々ならぬ努力の結晶である。
趣味を持たない大人が増える昨今、ここまで趣味を追求し、こんな大きな成果を出せる人なんて、そうそういるものではない。
今まで、ありがとうございました。
と締めくくりたいところであるが、いちMetal Shockファンとしては、まだ継続してほしい。
継続できずとも、不定期的であっても、「Metal Shock」という名のもとで、また開催してほしい。
主催者側の都合を無視した、非常に利己的で無礼な発言かも知れないが、これが僕の本音である。
僕にとって、DJイベントでこれ以上に楽しめる場所は、ないだろうから。