キックボード旅人の日常

キックボード旅人による、旅の話とか日常のこと。

サバイバル廃村キャンプ【1】

トラブルには、2種類ある。
笑って過ごせるものと、そうでないもの。
前者しか知らない3人にとって、それはあまりに突然で、空虚なできごとだった・・・


梅雨の真っ只中だというのに、信じられないほどの快晴!
1ヶ月以上も前から予定していたキャンプは、朝からゴキゲンである。

メンバーは、ピースケさん・AKiNoBuくんの3人。
「超アウトドア」をうたうこの3人が、普通のキャンプをするわけはない。
人のいない村、つまり廃村でキャンプを行うこととなった。

時間はたっぷり2日あるというのに、午前9時という早い時間に集合。
今回「少年回帰」というテーマを勝手に抱いていた僕は、麦わら帽子に魚とり網、タンクトップのいでたち。
駅前を行き交う人にチラチラ見られながら、確実に避けられる。
同じメンバーであるピースケさんですら、気づかず目の前を素通りする有様。

網でえいやっ、とピースケさんを捕獲し、間もなくあらわれたAKiNoBuくんと合流。
すでに車いっぱいに詰まれた荷物に、僕の持ってきたガラクタ類を詰め、出発!


さすがに朝早いせいか、みんなあまり元気がない。
しかし高速に乗ってからは、徐々にヒートアップ。
不足している食材を買い込むころには、テンションも最高潮だ。

やがて、廃村行きの林道に差し掛かる。
林道にしては、やけにフラットで、整備されている。
それでも、何箇所も水溜りがあり、幾度となくスプラッシュ体験をする。
もちろん、そのたびに「いやっほうっ!」と車内では、かけ声が上がっていた。


意外に長かった林道の、勾配がなくなったころ、ようやく廃村へ到着。
「散策してぇ~」
「写真撮りてぇ~」
「腹へった~」
三者三様の欲望を抱きながらも、まずは荷物を降ろす場所を探す。

すぐ左手が廃村跡で、建物が残っている。
河原がやや広めで、一夜を過ごすには申し分ない場所である。
ただ、そこへ行くには小川を越えなければならない。

すでにテンションの高まった3人に、考える余地はない。
二輪駆動の車は、迷わず小川へ飛び込む。

が、小川から脱出できない!
ほんのわずかな坂道を、上りきれないのだ。
「うわぁ~、やっちゃった~」と、笑いながら過ごす3人。
助走をつけてトライし、荷物を降ろして車体を軽くし、空回りするタイヤの足場に石や板を敷き詰める。

が、小川から脱出できない!
いつしか、3人から笑顔が完全に消えうせた。
こうなったら、ロードサービスにけん引をお願いするしかない。
・・・のはいいが、ロードサービスを呼ぶにも、携帯が完全につながらない。
当然、人通りはない。
歩いて携帯圏内の場所へ行くにしても、車で相当時間のかかった林道を歩くとなれば、どのくらい時間を浪費するか、想像ができない。


なすすべもなく、ただ時間だけが虚しく過ぎてゆく。
梅雨の合間に照りつける太陽が、妙に皮肉に感じられた・・・

(つづく)