キックボード旅人の日常

キックボード旅人による、旅の話とか日常のこと。

ラスト御徒町~後編~

すっかり日本酒で上機嫌になりながら、上野ぶらり旅の続き。


道は上野方面へ着き、折り返して逆方向の通りを進む。
ここはアメカジゾーン、ありとあらゆるアメカジのお店が並ぶ。
アメ横側もそうだが、本当に種類が多く、アメカジ好きにはたまらない。

ここで見つからないアメカジのブランドなんて、ないのではないか?
自分の好きなブランドの新作を、こんなに大量に見られるのは、やはり楽しい。
ただ、いちばん好きな「ダルチザン」だけがなぜか見つからなかった。
気になるアイテムがいくつかあったが、さすがに定価で買うには高すぎるので、泣く泣く買わずじまい。


再び逆方向に折り返し、アメ横に並行した道を歩く。
この道は、あまり通ったことがない。
ここはどちらかといえば、チェーン店と食品店が多い。

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興味をひく店舗は特にない。
唯一寄ったのは、こんな繁華街に似つかわしくない、お寺。
けっこう立派なお堂で手を合わせると、ここが東京であることすら忘れられる。

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もっと、今まで寄ったことない場所へ行こう。
ということで寄ったのは、上野側にある「アメ横センタービル」。
地下にある食品街とやらに寄ってみると、人がごった返している。

売っているものは、ほとんどがアジアの食材。
よくよく見ると、店員もお客も、アジア人が多い。
てゆうかもう、アジアやん!
こんな世界が広がっていたなんて、知らなかった。

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ちなみにビルの2階へ行くと、まさかのガラガラ。
靴屋がいくつかあり、あとはシャッターが降りている。
地下やアメ横にはびこる人の群れとは、あまりにギャップがありすぎて驚く。
「階段に登る」という行為が発生するだけで、ここまで人は寄ってこないものなのか。


ここに来て、テンションが下がってくる。
疲れというよりは、お酒が切れてきたのだ。
こいつを回復するには、酒しかない。

再びアメ横に戻ると、午前中とは比べ物にならないくらいの人の数。
もう、歩くのもままならない。
それでも食料ゾーンに紛れ込む。
ここの一角に、台湾屋台っぽいお店の並ぶ場所があり、気になったので寄ってみることに。

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席がいっぱいながらも、10分待って何とか着席。
ビールと小籠包を注文し、しばらく休憩する。
店員さんからお客から、ここもやっぱりアジア人ばかり。
客を客と思わない接客、座っているのに遠慮なくガンガンぶつかってくる態度、守らない優先順位など、アジアの食堂で味わうフラストレーションが山積み。
しばらく長居しようとしたが、ビールが空くとすぐ退散した。

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飲みたりなさがあったので、すぐ近くの海鮮屋へ。
ここも、まさかの接客がアジア人。
写真とは量も切り方も違う「まぐろ造り」、これはどう見ても「筋子」やろという「いくら」など、小さなボッタクリが目立つ。

結局、アメ横でアタリなのは、1軒目の立ち飲み屋だけらしい。

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その後も、行ったことのない通りをウロつく。
意外だったのは、アメ横と逆方向の道を一本外れた道に、立ち飲み屋がえげつないほど並んでいたこと。
こんなんあるんなら、初めから行っときゃよかった!
そもそも、上野によく通っていたころから知っていれば、さらに上野を楽しめたのに!


などなど思いつつ、最後はなぜかラーメンでシメ。
とんこつラーメンをいただいたわけだが、すでに飲み食いして胃がいっぱいだったので、気分が悪くなった。
なぜラーメンを食べてしまったのだろう・・・


こうして、当面来ることはないだろう上野を満喫した。
オリンピックによって、この闇市感がなくならないことを願うばかりだ。

ラスト御徒町~前編~

今週末は仕事で、年に一度の東京出張。
土曜は終日職務で、日曜はフリー。
こんなこと行っては会社に怒られそうだが、タダで東京行けて泊まれるのだから、ありがたい限りである。

土曜は職務あがりに、昨年行った坊主バーへ・・・行くはずだった。
しかし実際は、ホテルのトイレにこもりっきり。
昼食を食べすぎてしまい気分を崩し、リバースしていたのだ。
我ながら情けない。
ということで、土曜はゆっくり体調を整え、日曜にかけることにした。


ちなみに恒例だった東京出張、今回が最後らしい。
最後なのでどこへ行こうか迷った。

正直、東京いたころ行きたい場所はひととおり行ったので、特に新しく足を運びたい箇所はない。
となれば、かつて住んでいた西葛西に行ってみようか。
とも思ったが、仲間がいたからこそ楽しい場所だったわけで、1日かけてブラついて楽しめることはない。
さんざん悩んだ結果、東京で唯一よく通った場所、上野へ行くことにした。


さて本題。
午前10時に御徒町駅へ到着。
朝早いからまだ店空いてないかな、と思いきや、アメ横はすでに人でごった返している。
さすが聖地!

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やたら安い、腕時計やらジャージやら靴やらが売られている下町感は、やはり落ち着く。
どうせ欲しいものがないだろう、と今までスルーしていたが、今回あえて見てみることにした。
まぁ結果的に、やはり欲しいなと思えるものは何もなかったし、よくよく見るとそう劇的に安いわけでもない。


やがて中盤、食料ゾーンにやって来る。
ダミ声で魚介をたたき売るさまは、まさにアメ横の風物詩であり、独特の雰囲気を醸し出している。
東京にいたころも、料理はしていなかったので魚を買ったことがない。
せめて、この場で食べれればいいのに。

なんてこと思っていると、1軒のステキなお店を見つける。
そう、魚が食べられる立ち飲み屋さん。
店員さんに声をかけられ、迷うことなく入る。

狭いスペースに設けられたテーブルには、それぞれ違った日本酒の一升瓶が並ぶ。
メニューは魚介ばかりで種類は多くないが、いずれも厳選された食材だと感じさせる。
大ぶりのカキやウニ、ホタテなども魅力的だが、何より目を引くのは「モウカの星」。
これはモウカザメというサメの心臓だ。

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見た目や食感は「レバ刺し」に酷似している。
それでいて、まったく臭みがない。
言うなれば、グレードの高いレバ刺しである。
これはもううまいに決っているし、思わず日本酒も進む。

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店員さんもまた、愛想がよくてステキである。
男性には「社長」、女性には「べっぴんさん」とベタすぎる呼称を自然に使い、ひとりで飲んでいたらちょいちょい話しかけてくれる。
写真も、店員さんから進んで撮ってくれた。

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軽く飲むつもりだったが、日本酒を飲んでしまったため、すっかりいい気分にできあがってしまった。


すっかりゴキゲンのまま、次回へ続く。

タビユメ

たまたま3年前の日記を見て驚いた。
まさしく今と同じ状況である。

夢を見るのだ。
旅をしている夢。

もちろん旅が好きなので、うれしいものだ。
目が覚めてから回顧すると、本当に旅をしてきたかのような気分になる。
何かしらの目的を持っており、途中で人に声をかけられ、宿を満喫する。
毎回違うパターンというのも、これはこれでリアルといえる。

しかし、最近夢の頻度が激しくて不安になる。
3年前は2日ごとに見ていたが、ここ1か月はほぼ毎日ではないかというくらいだ。
夢は深層心理を映す鏡とも言われているらしいが、これは何か自分の心の中でとんでもないことが起きているのではないだろうか?
もしくは、何かしらの暗示とか?

ついついネガティブに考えてしまうのは、僕の悪いクセだ。
ここは素直に、毎日の旅を満喫するとしよう。
とか言いつつ、そろそろGWの旅プランも考えなければ。
あっなるほど、GWが近いから気分が高揚しているだけなのかも知れない。

劣等ライター

夢は旅ライター。
20代のころにあこがれては、徐々に薄れてしまっている、はかない夢である。
しかしながらも夢は諦めきれず、とりあえずWebサイトで旅日記は書いている。

お恥ずかしい話、昔は自信満々に書いていた。
「オレの文章はうまい、おもしろい!」
と自信満々で、自主出版も考えたほどだ。

それが今や、まったくの真逆である。
ヘタくそすぎるやろ!
昔の文章はもちろんそうだし、それから成長はしているものの、まだ全然である。

ヘタくそに気づいた理由はいくつもあるが、最近でいえば、やはりプロの旅ライターとの比較であろう。
情景が、心情が、歴史が、見事に書かれている。
まさに自分が旅を体験しているかのようである。
中には文章そのものがヘタクソな人もいるが、そこは旅のアイデアや突飛した行動でカバーされている。

それでいえば、僕のはただの議事録である。
僕が読み返す分には、アルバムを開くように「こんなこともあったな」と記憶を蘇らす効果がある。
しかしこれは他人様が読んで、どこまでわかるだろうか。
土地や観光スポットの情報などまったくなく、どちらかといえば心情ばかりが先行している。


などなど、とにかく劣等感を覚えざるを得ない。
昨日まで書いてた日記なんかも、本当はもっともっと島の魅力を書きたかったのに。

ちょっと本腰あげて、旅日記の書き方を勉強しないといけない。
添削したり教えてくれる師匠がいないものだろうか。

さぬき広島遍路とひるねこ生活~3日目~

【3日目・バタバタ朝】
3日目も午前6時半に起床し、すぐさま朝食の準備。
昨日のようにはゆっくりできないのは、昨日中断した「青木」へ行ける7:57のバスへ乗るため。
とはいえ、この場所で露骨にバタバタしたくはなく、朝食はやはりお庭のテーブルに出て、ゆっくりいただく。

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食事を終え、歯磨きをしようかと思った矢先、お宿のご主人が玄関に来る。
何かと思えば、何とクリームシチューを持ってきてくれた。
実にありがたいことである。
ちょうど朝食も少なめだったので、ありがたくいただく。

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準備にはそう時間はかからなかったので、余裕でバスの時間には間に合った。


【朝遍路】
朝からは登山道を歩く。
早朝に登山は、実にすがすがしい。
もちろん途中の道では誰ともすれ違わず、山頂では島を独り占めしたかのような気分を味わう。

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まどろんでいたら、お彼岸で島に帰省してきたという人が登ってきた。
かつて80年代に砕石で栄えていたころの島の話を、生々しく教えてくださった。

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山を降りてからは海沿いを進む。
途中、荒れた山道を経由し、いったん宿に戻る。

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【ひるねこ小休止】
シャワーで汗を流し、庭で昼食をとる。
やはりこの空間は落ち着くし、ついついゆっくりしてしまう。

本当は、今日中にすべて巡るためにもっと早めに動かなければいけないのに。
などと思いつつ、昨日ご主人にもらったざぼんを懸命にむいては口に運び、昼の優雅な時間を過ごす。
皮が厚くむきにくいのが、ゆるやかな時間を楽しむのにちょうどいい。


【昼遍路】
ゆっくり休憩をとった後は、最後のお遍路めぐり。
時間的には、余裕があるはず。
と思いきや、けっこう時間が押してしまい、最後の88番をまわりきれず。
がっかりしながらも、島を再訪するきっかけができたとも感じ、まんざらでもない。


【終わり】
肝心のお遍路の部分を省略したので、あまり昼間の島の様子が書けていないな。
昼はバタバタ、夜はゆっくりという、ある意味メリハリのある旅になった。
すべてを通していえることは、日中本当に静かなのと、島民のみなさんがとにかくやさしい。
もし人生すべてがイヤになったときは、ここに逃げ込んで何週間か過ごしてみたい。
きっと、立ち直るヒントをもらえるのではないかと思える。

ここまで再訪を強く感じた島はない。
オススメです。

さぬき広島遍路とひるねこ生活~2日目~

【2日目・ゆったり朝】
1日を少しでも長く楽しむべく、少し早めの午前6時半に起床。
朝食を作り、少しでも朝というロケーションを楽しむべく、庭にあるテーブルでいただく。
まわりは集落で家が並んでいながら、生活音がまったくしない。
きっと、見た目以上の過疎化が進んでいるのだろう。
鳥のさえずりを聞きながら、徐々に明るくなる日差しを感じる。

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いつもなら食後すぐ出かけるところだが、しばらく庭に居座る。
昨日の続きを巡るために江の浦へ行くのに、1時間歩くことがおっくうというのが理由の1つ。
それを回避するためにはバスを使えばいいのだが、バスは1日6本しかなく、10:34まで待つ必要があるのだ。
もう1つは、やはりこの「ひるねこ」のゆったりとした雰囲気。
ガツガツと動くのではなく、静かな時間を噛みしめることがこの島・この宿の楽しみ方なのだ、と感じたためである。

宿で借りた本を読んだり、日記をまとめたりして時間を過ごす。
他にやることがないので、いずれも集中ができるのでありがたい。

やがて時間になり、バスへ乗み「江の浦」へ。

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【お遍路】
2日目のお遍路は、主に集落を巡る。
しかし集落は細い道がたくさんあるし、手元の地図と場所が異なっていることもあるため、思うように見つけられない。
前日同様、思った以上にスローペースとなり、途中気持ちがあせってしまう。
ただ、あせりながらも番号を飛ばさないよう執念深く石仏を探したり、神社などお遍路以外の観光を楽しんだ。

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夕方は心も体も疲れ果ててしまうので早めに帰り切り上げたかったが、結局ヘトヘトになるまで歩き続けた。
もちろんバスの時間は過ぎてしまったため、「青木」という集落から宿まで、1時間も歩くこととなった。

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【2泊目・夕食】
宿へ着いたのが、午後5時半過ぎ。
入浴や食事の準備も考えると、やはりこのくらい早めに帰ってくるほうがいい。

お風呂の準備をしていると、お宿の主人がやって来る。
「これ畑でとれたやつ」
と、柑橘系でも大きさにインパクトのある、ざぼんを2つ手渡される。
こうしたおすそ分けもありがたいし、何よりこうして適度に話しかけてくれる距離感が、ちょうどいい。

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汗を流してからは、ふだん立つことのないキッチンへ行き、調理をする。
うどん3玉を温めながら、何となくで買ってきた牛肉を、冷蔵庫にあらかじめあっただし醤油・持ち込んだ日本酒・テーブルに置かれていたコーヒーシュガーで甘辛く煮込む。
適当な割にほどよい具合に味付けされ、肉うどんの完成。
生卵を落としてぐちゃぐちゃにかき混ぜて食べると、それはもう自分で作ったものと思えないほど絶品!
まぁ、料理がうまいというより、1日歩きまわった後のメシがうまくて当たり前なのだが。

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胃は落ち着いたが、まだ買ってきた酒が残っているのと、食材も余っているので、もう1品に挑戦。
つまみ用に買ったサラミと、もやしをフライパンに。
昼間、茂浦で買った鷹の爪も入れ、キッチンにあったごま油を使って炒める。
これまたビールにも日本酒にもあう、辛味の聞いた味。
ただ、鷹の爪を入れすぎてしまい、途中から辛さに悶絶する。

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昨夜と同じく夜道を散歩したり、再び風呂に入って体を温めたり。
ふだん絶対やらないことばかりを、あたかも生活の一部として体験していることが楽しくてたまらない。

さぬき広島遍路とひるねこ生活~1日目~

盲点というか、自身の考えの甘さというか。

昨年よりミニ遍路に対して、本格的に力を入れている。
まずは近場から精査していこうと、近畿や中国地方の情報収集をして、それなりに近場はまわっている。

しかし、四国地方はまったく調べていなかった。
ミニではなく、本チャンの遍路があるためだろう。
改めて調べてみると、さすがは本場、ミニ遍路がごろごろ見つかる。

特に盲点だったのが、交通の便。
大阪から四国までは遠いものだと思っていたが、電車で3時間もかからないうちに行けることがわかった。
これはもう、行くしかないでしょ。

四国の、特に離島にある「島遍路」を重点的に調べ、今回ターゲットとなったのが「広島」。
名前が紛らわしいが、広島県ではなく香川県にある「広島」という島である。
昨年行った北木島と同じくらいの広さがあり、3連休で行くにはもってこいかと思われる。
おそらく3日もかからないので、隣の「手島」でも島遍路をするべく、行き先をこの広島にすることを決めた。


【広島へ】
午前9時過ぎに丸亀駅へ到着するや、すぐさま駅のすぐ横にあるスーパーへ。
今回予約した宿は素泊まりで、島に食堂もないということなので、事前に買い出しが必要となるのだ。
こういうときに実家暮らしは苦労するもので、何を買えばいいのかわからない。

とりあえず、ここへ来るまでの電車で考えた買い出しメモを片手に買い物をする。
しかし、スーパーにも来慣れていないためか、いろいろと目移りしては、迷ってしまう。
結果、精算が終わって商品を詰めたころには、渡船出発15分前。
あわてて渡船乗り場へ向かうも、途中で逆方法に進んでいることがわかり、重い荷物を抱えたままダッシュをすることに。

離島でのんびりするつもりが、こんなところでバタバタしてしまった。
なお、渡船には時間ギリギリ間に合い、何とか予定どおり広島へ。


【GHひるねこ】

渡船を降りるや、1人の女性が立っている。
ひと目見て、僕を待ってくれていることがわかる。

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今回の宿は、広島のゲストハウスである。
亀岡から広島への玄関口である「江の浦」が島の南方にあるのに対して、このゲストハウスは北方に位置する。
だから、わざわざ出迎えをしてくれていたのだ。

車に乗り込むと、宿までの10分間、いろいろ島の情報を教えてくださった。
いつもは人が少ないが、たまたま彼岸と重なり、今週末は島に来る人が多いこと。
この界隈の塩飽諸島でも、特に面積が広いことから「広島」と名付けられたこと。
島にある王頭山の山頂付近は庭園みたいになっており、明日・あさって丸亀から多くの人が来ること。

やがてゲストハウス「ひるねこ」へ到着すると、今度はご主人さんも出迎えてくれる。
古民家を改修したというこのゲストハウス、キッチンと部屋が3つあり、縁側があったり、庭があったりと、まるで田舎に帰ってきたかのよう。
なお、隣にある畑でできた野菜や果物は、勝手に取って調理してOKだそうな。

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この2日間、客は僕のみらしい。
久しぶりのドミトリータイプの宿で、旅人とのコミュニケーションを楽しみにしていたので、ちょっと残念である。
でも、このじゅうぶんな広さのある古民家を、独り占めできることは何より贅沢である。


【広島の文化】
荷物を置いた後、夫婦の住む母屋へ案内される。
そこにはさまざまな書物があり、この広島を知るには十分すぎる量がある。
何ならこの広島を知るために、文献あさりで3日使えそうである。

中でも興味を惹いたのが、毎年旧正月に行われている「百々手神事」。
村人が裃(かみしも)を着て、弓矢で的を射抜く手腕を競うというもの。
的や矢など、毎年すべて手作業で作成するそうで、準備にまる2日かかるとのこと。

また、最後に丘の上にある神社へ行き、山へ向かってみんなで矢を射る。
その矢を持ち帰り玄関先に飾る、というところまでが行事らしい。
なるほど、集落を散策すると、どの家屋にも矢が飾られていることがわかる。

ご主人いわく、行事として代々続けられていたが、その風習の意味は風化されていて、誰も知らない状態だったという。
それが最近になり、見つかった古文書が解読され、行事がより昔のころの風習に寄せられているそうな。

ちなみに、塩飽諸島一帯には海賊がおり、有名な村上水軍が誇る「武力」に対し、こちらは「技術」に定評があり、精度の高い造船などをしていたらしい。
その技術を見込まれ、島民は武士としての称号を与えられた。
祭りで袴の衣装を着るのも、その武士としての称号になぞらえたものらしい。


【島の東部】
1時間ほどのお話の後、ゲストハウスへ戻る。
寒いけれども雰囲気を楽しむべく、庭にあるテーブルで昼食をいただく。

食後すぐさま、散策に出かける。
島を時計回りにまわるべく、まずは島の東部を南下する。

道は両隣が藪に囲まれており、何もない。
海沿いの道にもかかわらず、海が臨めるのはごく限られた場所だけ。
坂道のアップダウンも激しく、体力が徐々に奪われていく。

ただ、時おり石垣や加工された岩などの人工物を発見する。
昔はこの地域にも生活があり、栄えていたのかな?
ということを想像しながら歩くのは楽しい。
許されるのなら、ここいらの藪をすべて取り除いて石垣の跡地の全貌を見てみたいものだ。

いつまで続くのかと思えるくらい、えんえん無機質な道は続く。

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【お遍路】
お遍路の詳細は、別サイトで紹介するので詳細は割愛。
年に1度「お大師さん」といって、お遍路めぐりをする文化があると聞いていたが、思っていたより散策は難儀する。
宿に戻ったのは、すっかり遅くなり午後6時過ぎ。

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【1泊目・夕食】
宿につくや、テーブルに料理が置かれていた。
「何か一品はお出しします」とお宿の人から聞いていたが、思わず目を疑う。
「骨付き鶏」「たことわかめの酢の物」「海藻」の3品が用意されている。
骨付き鶏は香川名物で、お店だと1,000円近くする代物である。
また酢の物のわかめは、磯の風味が強く、都心ではまずいただけない鮮度である。
なるほど、「一品」ではなく、「逸品」ということだったのか。

少食の方なら、これでじゅうぶん夕食となるだろう。
とても「素泊まり」とは思えない。

※たまたま閑散期で客ひとりだったためサービスをいただいたかも知れません。
 必ずしも宿泊者すべてがいただけるわけではない、ということを補足しておきます。

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キッチンでは電子レンジや食器乾燥機、トイレでは洗浄便器と、古民家とはいえ近代的な家電が揃っている。
しかし、テレビは置かれていない。
夕食はテレビを見ながら、ということが体に染み付いてしまっているため、何とも落ち着かない。

しかし、徐々にその意味がわかってくる。
静けさを満喫できるのだ。
ふだん、いかにテレビという機器に時間を奪われ、時間を支配されているかがわかる。
時間を忘れ、食事と酒だけに意識を集めることができるのだ。

食後も静かで、さすがに孤独感は隠しきれないので、酒で紛らす。
おおぜいでワイワイ飲む酒もいいが、こうして静かにしっぽり飲むのもいいものだ。

さらに時間を余すので、ご近所を散歩することに。
初春の夜は寒いが、しっかり着込むとそれほどでもない。
静かな路地を抜け数分歩いたところに、海岸がある。
海から離れた場所で育った者として、こうして夜の海を眺めるなんて新鮮でたまらない。

また、目が暗闇に慣れたころ空を見上げると、満天の空。
旅行とは現実逃避をする場所と認識しているが、ここまでかけ離れられる場所というのも珍しい。
つくづく、この島に来てよかったと痛感する。