キックボード旅人の日常

キックボード旅人による、旅の話とか日常のこと。

さぬき広島・手島遍路と旅ねこ生活~その4~

離島旅、2日目。

 


午前5時半という早い時間に起きたのは、夜ヒマで早く寝たせいではない。
隣の手島へ渡るための、第1便の渡船に乗るためだ。
これを逃すと次は昼まで渡船が来ない、というのが離島の厳しいところ。
船の出る江の浦まで宿のご主人に車で送ってもらい、いざ手島へ。

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手島というのは、周囲10キロ・人口20人ほどの小さな島である。
ここでの目的は、やはり島遍路。
島自体が小さいうえ、集落のあるエリアはさらに狭い。
事前の情報で「石仏は集落内にある」と聞いていたので、もしかすると数時間ですべて周れるかも知れない。

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手島の港へ降りると、まずは石仏の場所を調べるべく、案内板を見る。
残念ながら、石仏のことは書かれていない。

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情報がないままどこから巡るべきか迷っていると、待合所の椅子に座っていたある男性から声をかけられる。
どうやら島の方らしい。
お遍路しに来たことを伝えると、「1番なら案内できる」と僕の返事を待つでもなく、歩きだす。
ついて行くと、港のそばの少し奥まった場所に小さな祠があり、そこに1番が安置されている。
案内してくれなければ、ここが1番であることは気が付かなかっただろう。

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「島の会長に聞いてみたら他の場所わかるかも」
と、今度は島のえらいさんのお宅まで案内してくれる。
残念ながら会長さんがいないとわかると、今度は副会長のお宅へ。
チャイムやドアノックなしに、まるで我が家のように敷地内に入っていくさまは、いかにも離島らしい。

 

副会長は男性とほぼ同年代で、60代なかばくらい。
男性にお遍路の話をひととおり話し「いっしょに周ったってや」と頼まれると、「準備するから9時に来て」と返答する。

 

不思議である。
まったくアポもとっていないのに、2人ともまる1日の時間を、見ず知らずの旅人に割いてくれるのだ。
しかも、それが当然のように振る舞ってくれる。
(以下は便宜上、はじめの男性を「マー坊」、副会長を「ブンちゃん」と記載)

 


待ち合わせまで時間があるので、マー坊が島の対岸にある「西浦」へ案内してくれる。
歩いている最中、島の情報をいろいろと教えてくれる。
島は小さいながらも、12もの集落に分かれていること。
島の人口は減っているが、うまいこと各集落に住民が残っていること。

 

また、お遍路文化がこの島を支えていることも。
年に2度「お大師さま」というイベントがあり、島内のお遍路の石仏を巡る。
石仏のある場所ではお接待があり、お菓子などが振る舞われる。
島遍路の残る離島ではよくあることだが、年に2度というのは珍しい。
また、島内にある88箇所の石仏とその界隈の道を、集落ごとにパートを分けて手入れしている。
なお、石仏は集落内だけでなく、島をぐるっと取り囲むように安置されているそうだ。

 

西浦までの道には、ひまわり畑もある。
残念ながら枯れてしまっているが、実に数多くのひまわりが広範囲に植えられている。
これは天然のものではなく、島民が1本ずつ手作業で、毎年植えているそうだ。
離島を訪問する人が見て、喜んでもらうためだとか。
なるほど、僕を案内してくれる2人が僕を受け入れてくれているのは、島に根付くこうした「お接待」の文化によるものなのかも知れない。

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西浦には、やや狭めの海岸が広がる。
砂浜ではなく、砂利というのが珍しい。
かつてはこの海岸も、もっと広かったそうな。
今は人影がなく物静かだが、夏場にはそこそこの観光客が姿をあらわすそうな。

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西浦を後にし、まだ時間があるのでマー坊の自宅へ。
ビールをいただき、家の前でしばらく談笑をして時間をつぶす。

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さていよいよ、ブンちゃんと合流し、お遍路開始。
というところで、つづく。