朝食にパン食べ放題という得点がついて、ひとり2,500円という超破格な宿を経ち、3日目スタート。
【鬼太郎列車】
米子駅からひとつ隣の駅で、電車を待つ。
のはいいが、まさか無人駅だとは。
繁華街を離れるとすぐ田舎、という光景は地方にありがちであるが、ここまで極端なのも珍しい。
やがて来た2両編成の電車は、外から中から、目玉のおやじだらけ!
今から向かう、境港の「水木しげるロード」にちなんでのことである。
駅案内の音声には、車掌の代わりに、鬼太郎と猫娘であろう声。
また、ひと駅ごとに「子泣きじじい駅」など、駅の俗称に妖怪の名前が使われている。
ひたすら続く田舎じみた光景とはうらはらの、よく凝った演出である。
【水木しげるロード】
いよいよ、境港駅に到着。
駅からの一本道が、道の左右に店舗が並ぶ「水木しげるロード」である。
外灯からマンホールから電話ボックスからトイレの標識から、ありとあらゆる場所に、妖怪にちなんだ細工がなされている。
道の要所要所にある妖怪の石像も、小さいながら存在感がある。
ここに来るのは、3度目。
はじめて来たときは、まだこのロードができたてのころで、昼食をとる場所もままならなかった。
にもかかわらず、このにぎわいっぷりは目を見張るものがある。
退化する商店街はいくらでも見てきたが、進化している場所は、地方ではここくらいではないだろうか。
ちなみに、道を一本外れると、見事なまでの田舎の住宅地。
ワープゾーンでもくぐったか、と本気で思えるほどの極端さである。
【To砂丘】
そこから電車2本を乗り継ぎ、鳥取駅へ。
ここからは、砂丘へバス移動。
しかしながら、ここも出雲と同じく、バスの便数が極端に少ない。
バスを待つ間、よくよく見ると、1日乗り放題の周遊きっぷがあることを発見。
便数ないのに何が周遊やねん、と思いながらも、普通にバスを往復するより安いので、すぐさまバスセンターで購入。
ちなみに、きっぷを買った矢先、前に並んでいた老夫婦が乗るバスを相談中。
とっさに、周遊きっぷのことをお知らせして、喜んでくださった。
こういうちょっとしたふれあいも、旅行の醍醐味でもある。
もしくは、出雲大社の「縁結び」のご利益の賜(たまもの)なのかも知れない。
【砂の美術館】
砂丘へ行く前に、砂丘のすぐそばにあった「砂の美術館」へ立ち寄る。
砂で形作られた、建物や人の巨大な創作物が、いくつも並んでいる。
遠近法や浮き掘りなどを駆使し、より立体的かつ壮大な世界観を表現しているさまは、圧巻。
驚くことに、砂には接着剤はいっさい使っておらず、砂を濡らして圧縮させたのみらしい。
作業中は何度も崩れたりするらしく、センスと技術が求められるという難易度の高さを知る。
期待以上に、楽しめた。
【鳥取砂丘】
美術館近くからロープウェイが出ており、それを下って砂丘へ。
砂丘は日本にいくつかあるが、景色の美しさは圧倒的である。
砂丘の広さだけでなく、途中に隆起した丘があり、そこの高低差がそこそこのものである。
丘に登ることが名物みたいになっているのだが、あえていちばん勾配のきつい場所を登ることにした。
これがなかなか、きつい!
体感的には、60度くらいの坂を登っている感じである。
ふと下を見ると、高所恐怖症なので思わず足がすくむほど。
とにかく恐さから逃れたいがために、早足でかけ上がった。
丘の上からの風景は、すぐそばの海が見下ろせて、言わずもがなな絶景。
ただ、バスの時間が迫っていたため、あまり長くは見られなかった。
余談であるが、砂丘のまんなかで、不自然にテーブルを1つ置いて何やら呼び込みをしている人がいた。
何かと見てみると、「除草ボランティア募集」とのこと。
ええっ、砂漠が緑化しているというのに、わざわざそれを阻止してんの?
広大な砂丘にそんな人工的な背景があるというのは、少し幻滅である。
そんなこんなで、3日間がっつりと満喫。
ご当地グルメ的なものをほとんど食べられなかったことと、温泉に入れなかったことが、心残りといったところ。
あと、移動時間が長くついたことも、ちょっと悔やまれるところ。
それでも、最高に満足できた。
変に人が集まりすぎるわけでないというあたりが、個人的に相性がよいのかも。
一週間経った今でも、余韻に浸っては仕事から現実逃避する日々を送っている。