キックボード旅人の日常

キックボード旅人による、旅の話とか日常のこと。

寝正月とサバイバル散歩

正月3日目は朝食を食べた後、年末年始に撮ったビデオを見ながら、やがて就寝。
見事なまでの寝正月である。

昼食後もビデオ鑑賞を続けたが、正月でぽっこりふくれたお腹が気になり、散歩へ出かけることにした。
特に行き先は決めず、気の向くまま歩いていると、いつしか山道へ。
一応舗装はされているが、道の両側が林や岩に囲われ、ひたすら上り坂が続く。

f:id:kickboy:20170104000836j:plain


少し疲れて汗ばんできたところで、道をそれる。
そこには岩があり、町を見下ろすことができる。
地元民しかわからない穴場であり、他に誰もいないので、ボーっとしたい時にはちょうどいい場所だ。
が、途中で雨が落ちてきたので、あまりゆっくりもできず、再び歩きだす。

f:id:kickboy:20170104000846j:plain


やがて到着したのが、かつて落ち武者が切り開いたとされる、傍示という集落。
そこから延びる「かいがけの道」という険しいハイキングコースで、下山することにした。

f:id:kickboy:20170104000854j:plain


少し道を進んだところで、右手に鳥居があることに気がつく。
そういえば、この鳥居をくぐったことがない。
時間は十分にあるし、進んでみることに。

急な上り坂を、息を切らせながら進む。
山奥にある鳥居なので、先に神社があるという保証はない。
途中で道は細くなり、獣が土を掘り起こした跡がいくつもある。

心細さを感じながらも進むと、やがて少し開けた場所にたどり着く。
そこには、小さなほこらが1つあるのみ。
細かく観察すると、人工的に削られた石がいくつもあり、かつて何かしらの建造物があったのかも知れない。

f:id:kickboy:20170104000935j:plain


さらに道が延びているので、好奇心の赴くまま進む。
すると、今度はいくつかの岩が連なっており、岩の上にまたしても小さな祠がある。
岩のふもとには石灯籠がいくつかあり、こちらかいわゆる「神殿」なのだろう。
日本では岩を崇めるという信仰があったという話を聞くが、まさしくここにある岩が、ご神体なのだろう。

f:id:kickboy:20170104000912j:plain


あれ?
道がさらに奥へと延びている。
この先にも何かあるのかな?
気になると同時に、すでに足はその先へと進んでしまう。

先ほどよりさらに険しい道を進むと、「竜王山」という小さな標識がある。
どうやら山頂へと到着したようだ。
まわりの木々が伸びすぎていて、展望が望めないので残念である。

f:id:kickboy:20170104000945j:plain


さて、下山しよう。
といっても、鳥居からの距離はそこそこある。
それよりも、山頂からさらに延びている道が気になる。
これを進むことで、ハイキングコースに合流できるのではないだろうか?
さらなる好奇心を抱くと同時に、やはり足は先へと進んでしまう。

これがいけなかった。

道は次第に細く、急坂となる。
というか、「道」なんてものではない。
左右が急な崖状になっており、足を滑らそうものなら大惨事になりかねない。
そして足場は落葉が蓄積されており、非常に滑りやすい状態になっている。
そもそも、靴はキックボード旅で底のすり減ったランニングシューズなので、余計に滑りやすい。

まっすぐ歩くことが困難な場所が、多数ある。
その場合、木やら枝やら岩やら、しがみつけるものは必ずしがみつかなければならない。
もしくは、しゃがんだ状態ですべり台を降下するように、ズルズルとすべっていかなければいけない。

全身運動による熱い汗と、転落の恐怖による冷たい汗により、いつしか汗ダクになっている。
汗を乾かすべく休憩をとるも、空はすっかりオレンジ色に変わる。
山から拝む夕日の美しさも、今日ばかりは恐怖に感じる。
日が暮れてしまえば、本気で危ない。

道は、常に先々が見えているわけではない。
もしかすると、途中で道が途切れる可能性もある。

唯一の救いが、枝に吊るされた赤いリボン。
先代の登山家が「ここは進める」という意味でつけた目印だと、いつかTVで見たことがある。

f:id:kickboy:20170104001002j:plain


やっぱり引き返そうか、と思ったのは、山頂からだいぶ進んだとき。
ここまで来たら、引き返せるか!
何度も引き返したくもなるが、ここは心を決めて進むことに。

危険な場所は連続しているが、特に本当に怖かったところが2箇所あった。
本当に足場が悪く、道が細い。
そうなると、元来の高所恐怖症が働き、つい足がすくんでしまう。
もう引き返せない、行くしかない、崖の下ではなくすぐ目の前の足場だけに集中せよ!
ただ自分に言い聞かせ、慎重かつ確実に進むしかない。

進めど進めど、町との距離が縮まらない。
分刻みで、日は落ちてゆく。
それでも、ほぼ道なき道を、ただ進むしかない。

ようやく高度が下がりたどり着いたのは、学校の体育館の裏手。
今度は、学校にいる人間に見つかる恐怖もよぎる。
が、さすがに正月早々、部活はしていないようでひと安心。

怖かった。
本当に怖かった。
転落して大事故になるか遭難するか、本気で思った。

そう思うと同時に、ミニ遍路やら廃墟めぐりやらで、これに近いシチュエーションには毎年何度も遭遇していることにも気づく。
今年1年の縮図なのでは、という気もしないではない。

安心感・疲労感・脱水症状を背負ったまま夕食で飲んだビールは、これはもう最高!
次々に空くビールの缶を見ながら、お腹を引っ込めようという本来の目的と大きくかい離していることにも気づいてしまう。