残念なベルギービールバーに寄った話、つづき。
実はバーに出る前、あらかじめもう1軒のお店を、スマホで検索していた。
そらぁ、こんな気分のまま帰れんからね。
で、店に出る前ビールを急ピッチで空けたのは、とても楽しそうなお店を見つけたからでもある。
店を出てから、いったん繁華街を抜け、10分ちょっと歩く。
派手さのない、入り組んだ道を進み、素朴な雑居ビルの2階のドアを開く。
そこで見た光景は、期待どおり。
カウンターに並ぶ、お坊さん。
部屋の隅にある仏壇と、壁ぎわにくくりつけられた、おみくじの数々。
そう、「坊主BAR」である。
コスプレ的なものではなく、店員さんは全員、現職のお坊さん。
メニューの形は蛇腹で、いわゆる「巻子(かんす)」と呼ばれる、お経が書かれたものに模している。
飲み物も、日本酒や焼酎の銘柄が「般若湯」「一遍」など、仏教をにおわせる名前のものばかり。
さらにフードに至っては、まさかの精進料理である。
ほぼ満席状態ながらも、強引にカウンターに座らせてもらい、日本酒を一献。
お客さんが多いにもかかわらず、いろいろと話をふってくれる。
さっきのお店と、大違いだ!
しばらくすると、奥からご年輩のお坊さんがあらわれる。
すると仏壇にお香がたかれ、店員さん全員で読経。
バーで生のお経が聞けるなんて!
終わると、ここから「お説法コーナー」。
お客さんからお題を2ついただき、いずれも仏教の言葉として返してくれる、というもの。
お題というより、お悩み相談というか。
2つとも、女性ならではのお題があがった。
面白いのは、いきなり結論を述べることはない、ということ。
お坊さんの体験談とか、ジョークなんかを交えつつ、後半にお釈迦さんの言葉を引用したりして、ぴしゃりと締める。
実にお見事である。
さらに、歓談。
少しお店が空いてきたところで、隣のお客さんとも仲良くなる。
やっぱりバーでカウンターっていえば、これでしょ!
意識ははっきりしつつも、いかんせん度数の強い酒を飲み続けているので、記憶があいまい。
最近ハマっている、ミニ遍路の話をして、店員さんも興味深く聞いてくれた、というのは覚えている。
楽しい時間は本当にあっという間で、気がつけば午前1時。
このお店に出会えただけでも、東京に来た甲斐があったな、と大満足である。