近年の、日本のビール市場が何だか香ばしい。
「ビールといえば黄色くキレのあるやつ」という、いわゆるピルスナーと呼ばれる種類が、かつて主流であった。
が、やれヴァイツェンだのポーターだの、いろんな種類のものが出始めた。
これらの風潮は、地ビールにおいては一般的であった。
これが、大手ビール会社にまで手を入れはじめたというところが、面白い。
「ノドごしを味わう」だけだった日本のビールが、「香りを楽しむ」「色を楽しむ」「後味を楽しむ」ことを、当たり前のようにできてしまうのだ。
一方、残念なことも。
現在の脱・ピルスナーというトレンドにおいて、もっとも主流なのが「小麦を使ったビール」。
あの大手企業が製品を出したときに、いち早く味見した。
小・・・麦?
大麦で作ったビールと、違いを感じられる人はいるんだろうか、と思えるくらい、差が微妙。
たいがい、小麦を使ったビールは、特有の甘みや香りが楽しめるはずなのに。
「とりあえず小麦使っちゃいました」程度では、せっかくのトレンドが台無しである。
あと、「種類」という話と少しずれるが、ビアホールにおけるメーカ独自のビール。
先導を切った「エクストラコールド」は、-2度といううたい文句であるが、そもそもピルスナーの適温は3~7度である。
もちろんそれがうまい、という人もいるので全否定はできないが、「冷たいほどうまい!」という、日本におけるビールの“間違った常識”をまだ押し付けるというのは、いかがなものか。
「フローズン生」もしかり。
アイデアこそ斬新だが、あれを割高価格でリピート買いしている人って、いるのだろうか?
いたらごめんなさい。
でも正直、泡をフローズンにしたからといって、ビールのうまさと全然直結しないのですよ。
「脱ピルスナー」というトレンドと、それにともなうビジネスチャンスが来ているからこそ、個人的には大手に求めたい。
まずは、中途半端なものを世に出さないでほしい。
で、メーカごとに、とりあえず1種類ずつでいいから、何か特化した種類を追及してほしい。
「エールといえばアサヒ」
「ヴァイツェンといえばキリン」
「アルトといえばサントリー」
「スタウトといえばサッポロ」
みたいな形で、ブランドごとに看板を掲げる。
こうすることで、ピルスナー以外の種類が、まず消費者にもわかりやすく浸透してくる。
そうして消費者の「舌」を作ってから、あらためて各社が種類をシャッフルしながら競争しあう、みたいな。
あくまでビジネスの素人としての意見なので、上記が理想的かは自信がない。
ただ、ようは日本において、確固たるビールのバリエーションを浸透してほしいのである。
気分やシーンによってビールを選べる、なんてことができれば、楽しいではないか。
なんてことを書いていたら、ビールが飲みたくなってきた。
が、今飲んだら間違いなく朝起きるのが辛くなるので、泣く泣くおあずけするしかない。