リラックスを楽しむために感じる緊張感というのも、おかしなものだ。
ただ、扉の向こうには、確実なるリラックスが待っていた。
金曜日は、家での食事がなく、外食を余儀なくされた。
厳密には、外食だけではなく、スーパーで惣菜買うという選択肢もある。
金額的なことを考えると、後者のほうがおトク。
スーパーの閉店時間を計算し、少し早めに会社を出た。
が、少しだけひっかかることがある。
以前、足しげくかよった、都島のダイニング。
最近なかなか行けずじまいであったし、久しぶりに顔を出すチャンスだ。
でも、駅から遠いしなぁ。
ちょっと体調も悪めだしなぁ。
わざわざスーパーのために残業切り上げたしなぁ。
すっかりスーパー行くモードのまま電車に揺られる。
そして、目的のお店がある駅で電車は停まる。
いやいや、スーパーの惣菜食べるつもりやし。
と思いつつも、ドアが閉まる寸前のところで、気がつけば下車していた。
まだ「お店行く!」という決心もつかないまま、足は自然と、記憶のある道を進む。
で、お店の前。
なんでこんな緊張すんねやろ?
といって、ここまで来て後戻りはできない。
ドアを開けると、いつもの景色。
マスターと顔を合わせるや、実に意外そうに驚き、そして満面の笑みで迎えてくれる。
わざわざカウンターから出てきてハグされるあたり、よほどうれしかったのだろう。
そんな僕も、ハグは気持ち悪いながら、うれしくてたまらない。
仕事しながらも、ちょいちょい話しかけてくれるのは、いつもどおり。
当然、出されるメニューは、どれも超一流品。
しょうもないギャグと、この味とのギャップが、また面白い。
しょうもないことを言っていると思えば、急に人生を語りだしたりもする。
今回特に、語りの内容が熱い。
もちろん、ただの机上論ではなく、自身の体験や信条をもとにした、どれもうなずけるものだ。
いつも、このお店に来たら思う。
飲み屋に大事なものは、ただ味がおいしいとか、はやっているとか、そういう部分ではない。
そこにいる店主なり従業員の人柄があり、そこに味やら値段のプラスアルファが乗算され、評価されるものだ、と。
そういった意味において、わざわざ遠回りになってでも来たくなるこのお店は、僕にとって100点満点なのだ。
楽しい話とおいしい料理をいただきながら、まだまだ居座りたい気持ちをぐっとこらえ、午後10時半にはお会計。
この時間帯を逃すと、下手すれば朝までマスターと飲むことになる。
店員でもあり、友達としても接していただける、妙な間柄である。
次は、いつ来れるかな?
それを楽しみに日々の辛い仕事をこなすというのも、悪くはない。