キックボード旅人の日常

キックボード旅人による、旅の話とか日常のこと。

カキづくめ・離島づくめ、日生旅!~後編~

昨日の続き。


【民宿・金栄丸】
定期船で10分、「頭島」という離島へ渡ったころ、太陽が沈む。
散策の余地もなく、向かった先は今晩のお宿「民宿 金栄丸」。
名前から察することができるとおり、店主はもともと同名の漁船に乗っていたのだとか。

小さな離島の民宿だとあなどるなかれ、外装も内装もなかなかきれい。
至るところに、羅針盤やら浮きやら、船にまつわるレトロなオブジェが並ぶ。
さらにカメラのコレクションが多数あったりと、とても小さな民宿だけで生計をたてているようには見えない。

食事の前に、お風呂へ。
ひとりで入るには大きめの家族風呂、といった大きさの床や壁面は、備前焼で覆われている。
赤褐色に囲まれた空間は、どこか独特な雰囲気である。

そして食事は、やはり主体がカキ。
カキ酢、カキフライ、蒸しガキ。
特にてんこ盛りだった蒸しガキは正直イマイチだったが、それ以外はもう、うまくてたまらない!

もちろん、お造りなど他の料理もあり、いずれもおいしい。
これだけのボリュームがあって、一泊8,000円は安すぎる。


【頭島・右半分】
翌朝、朝食をいただき、チェックアウトしてからは、島を散策。
まずは東側を歩くことに。

離島だというのに、意外に民家が多い。
農作業にいそしむ島民もちらほらいて、なんなら本島の片田舎よりも、栄えているようにも感じる。
とはいえ、道の脇に落ちている空きビンが昔の返却式1リットルビンだったり、畑にぶら下がる鳥よけがレーザーディスクだったりと、やはり本島との時差を感じる。

島に設置されている展望台からは、広大な空と海、そしてまわりの島々が一望できる。
あまり高所にあるというわけではないのだが、まわりに景色を邪魔するものがないので、とても見晴らしがよい。


鹿久居島
頭島の北部から、鹿久居島へ渡る橋がある。
途中、歩道が途切れて車道のみとなる。
渡ってもいいのかな、という心配はご無用。
まったくといっていいほど、車が通らないからである。

鹿久居島は、日生からいちばん近く、かつ日生諸島でもっとも大きな島。
にもかかわらず、他の島と比べて、極端に閑散としている。
というか、本当に人の気配がない。

とりあえず道沿いに歩いて、みかん狩りをしている農園や、船乗り場などを散策。
しかしやはり、人気がない。
車は停まってはいるものの、キーがさしっぱなしで、放置状態。
みかんも、収穫されカゴに詰まれたものが多数あれど、そのまますべて腐った状態なのだ。
一夜にゴーストタウン化したのか、と思えるほど、不気味さがただよう。

時間的に、ここで昼食。
当然お店などないので、かばんに入っているおかし、昨日買ったもち、インスタントみそ汁などを、アウトドア用バーナーで料理して食べる。
無計画で質素な食事ではあるが、道端でザコ座りしながら食べるという非日常的シチュエーションが、それをおいしく感じさせてくれる。


【頭島・左半分】
再び橋を渡り、頭島の西部を歩く。
勾配のある地形に、民家が密集しているさまはすごい。
散策路を外れ、裏路地を歩こうものなら、それが路地なのか人の家の敷地なのかわからない、細く狭い道となる。
小さいころ、民家と民家の間を抜けては散策して遊んでいた、そんな思い出が頭をよぎる。

とにかく路地裏は、「どこに通じるかわからない」という感覚が強く、墓地であったり畑であったり、少なくとも手元の地図には掲載していない場所へ連れていってくれる。
定期船の時間ギリギリまで、とにかく歩き回った。


【カキオコ】
夕方、日生へ戻ってからは、一路「浜屋みっちゃん」というお好み焼き屋へ。
最近B級グルメとして名高い「カキオコ」という、カキをふんだんに入れたお好み焼きの名店である。

午後4時過ぎという中途半端な時間にもかかわらず、お店は行列。
店内に入れたのは、1時間も後であった。

お店には大きな鉄板がでんと置かれ、それの三方を客が囲い、残りの一方で体格のよいおばあちゃんがお好み焼を焼く、というスタイル。
カキオコ以外にも、エビオコというメニューもあるのだが、基本はカキオコが1人1枚自動的に用意されるというシステムである。

何より、お好み焼きのサイズが大きい!
そして、カキが10個くらいだろうか、とにかくふんだんに入っている。
それでいて900円とあれば、はやっても当然であろう。

う~ま~い~!
ソースはたっぷりめが好きであるが、リクエストすれば塗ってくれるので、個人的に申し分なし。
小麦粉の量でごまかしている都会のものとは違い、キャベツもふんだんに使われているので、お好み焼きの本来のうまさが凝縮されている。
お店で食べるお好み焼きで、ここまでおいしいと感じるのは、珍しい。

ちょうど僕の後ろに並んでいたカップルで、お店は閉店。
黙々とお好みを焼いていたおばあちゃん、無機質で無愛想な雰囲気があったが、すべて焼き終わるなり、座り込んで世間話をしてくれる。
とってもとっつきやすく、やさしい方である。
日曜にのみ手伝いに来るという息子さんが、まかないを大量に作る姿など、普通なら絶対見られないオフショットを見ることができた。


そんな感じで、期待以上の1泊2日旅行は終了。
最後、まさかまさかの駅前の土産屋がすべて閉店というオチもありながら、たんまり満足する旅行ができた。

これは来年以降、毎年かようこととなるだろう。