キックボード旅人の日常

キックボード旅人による、旅の話とか日常のこと。

弾丸!廃墟ツアーin長崎~前編~

まさか、飛行機を使ってまで遠征するとは。かねてより念願だった、長崎への廃墟旅行へ行ってきた。1泊2日という強行スケジュールの、前編をどうぞ。【to I島】午前6時に起き、電車→飛行機を経て長崎へ。長崎に来たという実感もないまま、さらにレンタカーで移動。高速を誤って降りるなどのトラブルもありながら、何とか予定どおりフェリーへ乗船。こんな短期間で、これほどまで多くの交通手段を使うことなど、あるものだろうか。 【I島徘徊】念願のI島へ上陸。ここは、かつて炭坑で栄えた島で、かつては7,000人近い人が住んでいたという。それが今や、300人足らずに減少してしまった。同じ経緯で閉山し、今や世界遺産になり下がった「軍艦島」との違いは、今でも人が住んでいて手軽に上陸できる、というところ。まずはぐるりと、車で島を周遊。巨大な工場跡がまず圧倒的な存在感でそびえ建ち、さらに奥へ行くと、人気のないアパートの群れ。とても数時間ではまわりきれない、今までにない圧倒的な規模の廃墟群に、思わず息をのむ。【食堂】ひとしきり感動をしてから、腹ごしらえ。島で唯一だという食堂へ。そこは、かつて市場というか、複数の商店が店舗を構えていたであろう食品センターの一角。入り口前にいる大量の猫を押しのけて、食堂へ。すると、食堂のおばちゃんと、酔っぱらいのおじさんが話をしている。おじさんのほうが、「何でこんなところに?」と、なかば不思議そうに、なかばうれしそうに話しかけてくる。が、いかんせん方言がきつく、何を言っているのかほとんどわからない。話していると、ちょっと怒った様子になる。どうやら、商店にある飲み物を1つずつおごってやる、と言っているらしい。いらないと言ってもきかないので、ありがたくいただくことに。外で猫とじゃれながら時間をつぶし、やがてカツ丼ができあがり。やや甘めながら、味付けが上品で、うまい!見た限り、やっつけで冷凍食品を扱っているのかと思える店構えだけに、意外であった。 【団地群A】食後、この島の名物ともいえる団地群へ。8階建てにもかかわらずエレベータのない造りは、廃墟でなくても珍しい。また、4階部分で山側に廊下が設けられ、廊下から山側の道路に出られるというのも斬新。島という有限の敷地を、いかに住民の負荷をなくして活用したかという、故人の知恵を強く感じる。中は、自転車やら子供の遊具がいくつかあるものの、生活感は残っていない。というか、扉がさびで開かない箇所が、ほとんどである。回廊は、完全に腐食していて、渡ることができない。しかし何より、屋上から見渡す景色は、思わず息を飲む美しさである。【団地群B】団地群はいくつかあり、もう1つの場所へ。ここは道までが雑草で覆われ、完全に自然と一体化しつつある。解体されるくらいであれば、いっそこのまま自然にとけ込んで欲しいと感じる。 【スーパー】島で唯一だという、スーパーへ。小さいころ、「よろずや」と呼んでいた小さな商店と、まったくもって雰囲気が似ている。コンビニほどの敷地内には、コンビニのようなきれいさや明るさはないまでも、生活雑貨のすべてがそろい、品数が多い。意外だったのは、値段。離島なのでそれなりによい値段がついているのかと思いきや、ほぼ定価どおり。ひょっとすれば、離島にしては非常に住みやすい場所なのかも知れない。【夜景】もっとまわりたい、という欲求も、時間切れという大きな制約によって阻まれる。フェリーで、夕日を浴びながら島をあとにし、長崎市内へ。向かったのは、夜景の見える展望台。土曜日だというのに、展望台までの駐車場は行列ができるほど盛況。諦めて少し下の駐車場へ停め、15分ほど坂をのぼる。もちろんながら、なかなかの絶景である。どうしても「地方都市」という偏見があるからこそ、光の多さには目を見張るものがある。【宿泊】「カトリックセンター」という、その名のとおりキリスト教により運営されているらしい、ユースホステル。ロビーのポスター類もさながら、周辺の建物なんかは、キリスト教にまつわるものだらけ。1人2,300円で、3人1部屋を借りられるリーズナブルさが、キリスト教らしいご慈悲の心を感じられる。【食事】宿から紹介されたお店は、ややこぢんまりとした居酒屋。メニューはそこそこ豊富で、創作的なものもちらほら。何よりすごいと思うのは、40席ほどあるというのに、キッチンは店主と思われる人ひとりでまわしている、ということ。カウンターからキッチンは丸見えで、その手際のよさは圧巻そのもの。注文した品物が遅くとも、その姿を見ると文句も言えない。頑固そうな人かと思いきや、ひととおり手が休まると気さくに話しかけてくれる。長崎の日本酒が1種類しかないことに対しては、「長崎は日本酒おいしくない」と、とても長崎のお店とは思えない、正直な情報をいただけた。さんざん食べて飲んだのに、1人3,000円というの驚き。近所にこんなお店があれば、かなりの頻度で立ち寄ることだろう。もちろん、味はハズレなしにおいしかった。こんな感じで、廃墟もさながら、観光という面でも実に充実した1日が終わった。