キックボード旅人の日常

キックボード旅人による、旅の話とか日常のこと。

どうぶついっぱい

珍しい来客、といっては語弊がある。
しかし、そのときは純粋にそう思った。

仕事をしていると、同じ部署のsuna(仮称)さんが僕を訪ねてきた。
同じ部署とはいえ、同じ案件にかかわっているわけではないので、非常に珍しいこと。

何の案件かな、と不思議そうに見ている僕に、手渡されたもの。
それは、たくさんのかわいい動物のイラストが印刷された、1枚の名刺。
「よかったら、ホームページあるんで見て」

意外にも、ごくプライベートなことであった。
suna(仮称)さんは、会社テニスの主催もしてくださっていて、いっしょにテニスを楽しんでいる仲である。
にしても、このタイミングでまさかプライベートなことで訪れるとは。
驚いた反面、うれしくもあった。


家に帰り、早速ホームページにアクセス。
そこに広がる世界には、感動や驚きという感情を、2・3歩踏み越えたものがあった。

動物についてのホームページ。
そこには、写真あり、イラストあり、動物の紹介文あり、ブログあり。
いずれも、これ以上に妥協のないクオリティと、圧倒的な量。

完全に動物に特化した内容に対し、写真やイラストの販売などもしている。
さらには、写真が一般書籍に掲載されていたり、フリーペーパーのインタビューを受けたり。

もはや、趣味の範囲を逸脱しているのではないかというほど、圧倒的なクオリティである。


この時点でじゅうぶん腰が抜けそうなのに、どうしても着目してしまうのは、ホームページそのものの造り。
デザインもさながら、いわゆるソースといわれる、ホームページの構成要素の元となる文書が、めっちゃくちゃきれい!

そこには、10年前僕が描いていた、理想の将来像があったのだ。


話は変わって10年前、新卒の会社をわずか10ヶ月で辞めた僕は、職歴もなく新卒という肩書きもなく、途方に暮れていた。
実質、職場復帰には1年以上の時間を要した。

しいて技能としてあるといえば、大学時代からちまちまと独学で勉強していた、ホームページ作り。
当時は、業界全体がまだ生まれたての状況で、いわゆる「HTML」と呼ばれる文書さえ理解していれば、そこそこ技能として認められた。

その「HTML」が使えることを武器に求職し、たまたま拾われたのが、前職なのである。
ホームページの作成に特化した仕事ではなく、HTMLを使った取扱説明書を作るための、ライターという仕事であった。
けっきょくHTMLの作業はあんまりなくて、今のライターという職業に至るわけである。

その会社に入ってからは、ホームページの仕事がないなりにも、とにかく業界誌を読みあさり、自身のホームページを作り変え、とにかく勉強した。
結局、趣味という枠ではついて行けないほど、ホームページの進化が急速に伸びてあきらめてしまったのだが・・・

そこであきらめていなければ、今ごろ僕もsuna(仮称)さんと同じ業界にいたわけだ。


話は戻って、人生の分岐というものの面白さを実感した。
ホームページの業界に入っていたら、ちゃんと続けられていたのだろうか。
プログラマーさんの業界ばりに、進化の激しいその波に、乗っかっていけたのだろうか。

そう思うと、今の業種につけたことが、奇跡に近いほどよかったと思う。
今も技能的にはまだまだやし、仕事中イヤやと思うこともあるけど、やはりきっちり「楽しさ」の部分を知っている。
だからこそ、続けられるのだ。


ううむ、ホームページの感想だけでよかったはずなのに、ついつい深いところまで入り込んでしまった。
「R-さんに続き、とてもよい刺激をもらった」と文章をくくるはずだったのに。

こういうところが、まだまだライターとして未熟である。