佐柳島に上陸し、猫の手厚い歓迎を受けた、つづき。
島の猫と戯れる客たちをすり抜け、島の南の集落「本浦」へと進む。
素朴な集落を進んで立ち寄ったのは、お墓に囲まれるようにたたずむ乗蓮寺。
お寺はきれいに手入れされており、お堂には立派なエンマ様が祀られている。
歴史を感じながらも圧倒的な存在感は、国宝になっても不思議ではないと感じる。
お寺から続く墓地は、南を進むに連れ小さな墓が並ぶ。
これは塩飽諸島ではよく見られる「埋め墓」と呼ばれるもの。
死体を埋める「埋め墓」とお参りをする「参り墓」の2つを用意するという、「両墓制」というシステムによるものだ。
墓地で道は途絶えるが、海岸に降りてすぐ南に「くじら岩」がある。
くじらには見えないながらも、独特な形状の一枚岩はインパクトがある。
港に降りてから歩きっぱなしだったので、岩の上で腰を下ろしてお茶を沸かし、休憩をする。
一服が終わると集落の細い路地を抜け、神社の参道を登る。
参道入口には「イノシシ出没につき参道立ち入り禁止」の看板がいくつも建っているのだが、バリケードはされていない。
マナー違反を覚悟で、先へ進む。
参道はやや荒れてはいるが意外にも手入れされており、本当に立ち入り禁止なのかがあやしい。
石段は長く続き、体力が削られる。
島に到着してからずっと風が吹いて寒かったが、ある程度登ったところで風がやむ。
さっきまでパーカーとダウンジャケットを着込んでいたが、いつしかTシャツ1枚になる。
ようやく鳥居が見え、門をくぐった先に「大天狗神社」の本殿がある。
長い石段を登ったという達成感もあるとは思うのだが、門をくぐったあたりから、神秘的というか神聖というか、独特な雰囲気を感じる。
本殿から左に進むと、岩を削って作られた「天狗様」がある。
見た目こそややマンガちっくながら、よくよく見ると胴体や脚など服にあたる部分はほぼ加工されておらず、うまく仕上がっているなと感じる。
さらに上り坂が続き、しばらく登ってはみたが、やがて道が薮に閉ざされてしまう。
後で調べると、その先に奥の院があるらしい。
石段を下る最中、野良仕事をしている島民さんに声をかけられる。
「上からの景色きれいやったやろ」
どうやら、参道から島の景色を見下ろせるよう、島民さんが道や周囲をしっかり整備しているそうだ。
その上で、神社を立ち入り禁止にしていることには、かなりご立腹の様子。
「何がイノシシやねん、役所のバカが」と言い捨てていた。
そこから進路を北へ。
相変わらず猫は多く、あちこちで猫の集団を見かける。
いったん建物が途切れ、しばらく歩いたところに突如現れるのが、学校の校舎。
といっても、ここは廃校である。
そして、今晩の宿でもある。
つづく。