キックボード旅人の日常

キックボード旅人による、旅の話とか日常のこと。

無題 ~とある1日~

午前6時半、二日酔いの脳を無理やり起こし、朝食を食べる間もなく支度をして外出。
会社に到着するのは午前8時、それから会議の始まる30分までに持参した朝食をいただく。
その間に他の支店から電話がかかってくるが、率先して出なければいけない。
電話を切ると、「何やその言い回しは?」と言葉の端々を細かく怒られる。

 


そして午前8時半に会議が始まり、これが実質的な業務の開始である。
前日に飛び込み営業をした会社のうち、何らか見込みのあるところを報告する。
どんな会社だったのか、どういった話をしたのか、次回どう対応するのか。
それに対して、「なぜこう言わなかったのか?」「もっとこうしろ!」と怒られる。


もっと説明するなら、そう毎日毎日ネタなどできない。
無理やりネタだとして捻出するわけだから、当然ウソをつかなければいけない。
で、根掘り葉掘り聞かれることで、余計に追い詰められる。

 


さんざんヘコまされてからは、少しだけ事務処理。
この間にいちばん電話が鳴るのだが、ここでも応対ごとに怒られる。


怒られることは、まぁ自分も悪いので仕方がない部分もある。
腑に落ちないのは、同期含め3人いるうち、なぜか僕だけが怒られることだ。

 


午前9時過ぎ、支店を出てから本格的な活動を開始する。
自社で開発・販売しているソフトウェアを、パソコンのハードとともに売りつけなければいけないのだ。
ITに興味のある会社は、すでに他社のものを使っている。
ITに興味のない会社は、いくら説明しても興味を示してくれない。


そうわかっていても、自分の担当地区を歩き、会社の看板を見れば足を運ばなければいけない。
もちろん、一見さんが歓迎されることなんて、まずない。
まして町工場の多い地区なんて、恫喝されることもしばしば。
目の前で名刺を破られるなんていいほうで、首元にノコギリを突きつけられることもある。


なぜ、怒られないといけないの?
僕が何か悪いことしているの?
どうせ次の会社に行っても、結局また恫喝されるのでは?
そう考えると、次の会社をまわる気持ちにならない。

 


午前中にがんばって数件回り、昼食を食べてからは自由時間だ。
ゲームセンターに行ったり、パチンコに行ったり、漫画喫茶に行ったり。


気楽でいい?
いやいや、気楽なものか。


自分は一体何をやっているのだろう、という自問と罪悪感が常にのしかかる。
自分が遊んでいる間に、自分の同期は成果をあげているに違いない。
もっといえば、自分以外の社会人は何かしらの仕事をして、何かしらの成果をあげている。
自分は、一体、何をやっているのだろう?


そんなことを考えながら遊んでいても、決して楽むことはできない。
ただ全力で、現実逃避しているだけだ。

 


午後6時、外出を切り上げて支店へ戻る。
そこからは事務処理である。
が、成果の上がらない自分に事務作業などあるわけがない。
しかし先輩や同期が何かしら作業をしているので、帰るに帰られない。
昼間サボっていた引け目も重なり、結局午後9時ごろまで、何かしら作業をする。

 


そして帰宅。
であるが、まっすぐ家に帰れない。
家に帰れば、また明日がやってくる。


向かう先は、立ち飲み屋だ。
現実逃避をするには、いちばん手っ取り早い。
ビールを飲み進めることで、ひとときのストレスフリーな時間を得られる。
さらに日本酒を飲み、ひとときの快楽に浸れる。


そこから家に帰るわけだが、親がしっかり夕食を支度してくれているので、これもいただく。
当然酒と肴をたいらげてきたのだから、お腹はいっぱいなのだ。
それでも、食べることでストレスから逃げる。
逃げる。
ただただ逃げる。

 


翌朝は当然、二日酔いだ。
それでも、会社には行かなければいけない。
支店で怒られ、客先で怒られ、楽しくない自由時間を過ごすという、生きた心地のしない現実に、身を置かなければいけない・・・


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という会社1年目のことを考えると、今は何てしあわせなんだろう。
当然不条理なんて腐るほどある。
が、小さな充実を得られることもできるし、内容はどうあれ仕事をしている
実感がある。


まだまだ、腐るわけにはいかない。