キックボード旅人の日常

キックボード旅人による、旅の話とか日常のこと。

さぬき広島・手島遍路と旅ねこ生活~その5~

いよいよ手島のお遍路へ。

 


ブンちゃんの家に戻ると、ブンちゃんは作業服に軍手・カマを持った出で立ちでで待っていた。
なるほど、ただお遍路に同行するというよりは、遍路道の整備を兼ねるらしい。


また、あらかじめ用意してくれていたのが、お遍路の資料。
88箇所をあらわす島の地図と、石仏を1体ずつ撮影した調査資料だ。
すごい!
インターネットで調べてもこの島の遍路情報はまったくなかったのに、ここまで頼もしい資料が入手できるなんて。
特に後者の資料はPCで作った手作りのデータであり、他のどんな図書館でも手に入れることはできないものだ。
資料に感動していることに笑われながら、いざ出発。

 


まずは渡船乗り場まで移動し、そこから時計回りに海沿いの登山道を進む。
道は歩きやすく、きれいに整備されている。
初夏のころ、お大師さんの一環で島民が整備したという証拠である。

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とはいえ、あちこちにクモの巣があり、夏場に人の往来がなかったことがわかる。
ブンちゃんが先導して、これを棒で次々ととってくれるのがありがたい。
道を歩くと、ぽつぽつと石仏が見つかる。
石仏には枝葉を供えるのがここの流儀だと、わざわざ供えるための枝葉をマー坊が差し出してくれるのもありがたい。

 

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40分ほど歩き「高須」と呼ばれる海岸に出て、休憩をとる。
汗ダクでバテバテの僕に対し、僕の父親ほどの歳である2人は、ほとんど疲れを見せない。


なお、巡路どおりだとここから海岸沿いを南下するわけだが、潮が満ちてきており危険だと断念する。
ここは泣く泣く、引き返すことに。
おそらく1人だったら、ムリしてでも行っていただろう。
でも、島民の2人が口をそろえてダメだというのだから、行けばとんでもない事故になっていたはずだ。

 

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いったん集落に引き返してからは、集落内の石仏をいくつか巡った後、昼食タイム。
マー坊は自宅へ戻り、僕はブンちゃんの家へ招かれる。
といってもごちそうされるのではなく、昼食は米とワンバーナーを持参していたので、庭で自炊する。
「ビールでも飲むか」と、ここでもビールをいただく。
昼からの体力や脱水症状が心配ではあるが、がっつり汗をかいた状態でビールを出され、断るわけがない。

 

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2時間のブランクの後、マー坊の自宅でマー坊と合流し、再スタート。
「手島池」をすり抜け、山道を進む。
ここは午前中の道よりも、さらにクモの巣が多い。
途中で道標のない分かれ道があるのだが、まったく迷うそぶりもなく突き進む2人が、何とたくましいことか。

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やがて急な下り坂を進んだところで、「あでの浜」へ出る。
ここではマー坊が持ってきてくれたバナナをいただき、休憩をする。
港から離れていることもあってか、プライベートビーチ感が強く、とても静かで落ち着く。

 


休憩が終わってからは、浜を少し進んでから山へ入る。
この登り口には何の目印もなく、1人だったらまず見つけられないだろう。

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ここからはしばらく、竹林が並ぶ。
太くしっかりした竹で、ここのタケノコはかなりおいしいそうだ。
また、竹があるのは昔ここが畑だった証拠だと、マー坊が教えてくれる。
なかなかの山道なのに、ここにわざわざ畑を作るということは、昔は島に相当な人がいたのだろう。
こうして島の歴史を感じられることも楽しい。

 

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島の西部、午前中にマー坊と来た「西浦」に出たところで、山歩きは終了。

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順路ではさらに海岸沿いを歩かないといけないのだが、今からだったら日が暮れてしまうとのこと。
ブンちゃんの家に戻り、ビールでノドをうるおす。


2人はずっと島にいるわけでなく、かつて都会で働いたのちに島へ戻ったそうだ。
なるほど、言葉のなまりが少ないのは、そのせいだったのか。
島の話だけでなく、それぞれ都会にいたころの話などに華を咲かせる。

 


最後は、集落にある石仏をいくつか巡り、渡船乗り場へ戻る。
まる1日行動し、旧知の仲のように振る舞ってくれた2人とも、ここでお別れだ。
あふれんばかりの感謝をありのままに伝え、固く握手を交わす。

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乗船し、最後は甲板で大きく手を降る。
2人もそれに応じてくれる。

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2人の姿が見えなくなったころ、じんわりと目頭が熱くなる。
感動なのか、感謝なのか。
自分でもよくわからない感情で、心の中が熱くなる。
今までいろんな旅をしてきたが、こんな気持ははじめてだ。

 


そんな感じで2日目を終えたところで、つづく。
夕食のくだりとかは割愛。