キックボード旅人の日常

キックボード旅人による、旅の話とか日常のこと。

劇団鹿殺し

ライターというお仕事に就くようになり、10年経過している。
そんな名刺を持たせていただいている以上、「文章うまいっす!」と胸を張るべきである。
が、実際のところは・・・ううむ。

ライターという職業のうち、「テクニカルライター」という、説明書の文章を扱うことが本業である。
なので、こちらは自信がある。
が、もっと一般的な文章においては、必ずしもそうとは言い切れない。

いくら文章書くのが好きだとか、テクニカルライティングで経験があるとはいえ、よくよく考えれば、文章の勉強ってあまりしていない。
いや、文法面では勉強したが、文章力強化という部分では。
生涯ライターとして生きるのであれば、こいつは致命的である。


ということで、今日は文章の訓練を行うことにした。
やり方は、中学だか高校のころ、学校で習った記憶がうっすら残るもの。
・「天声人語」を写経(そのまま書き写し)する
・「天声人語」を要約する

まず写経。
おおう、なるほど、めっちゃこの人、文章うまい!
読むのとは違い、文章の流れの展開というものを、肌で感じられる。
ここで昔の流行話を持って来るか~、ここでそんな単語出るか~、などなど、自分も1から書いている気持ちでやると、驚きの連続である。

次に、要約。
600文字ほどの文章を、200文字以内におさめる、というもの。
ただただ文字をそぎ落とすだけでは、半分も減らない。
なので頭で考え、ときに自分の言葉で補いつつも、はじめは250文字ほどで、そこからそぎ落とし作業を何度もくり返し、ようやく199文字。

要点は削れないので、全体をしっかり頭で組みなおす必要がある。
ただ、ひととおりできたはいいが、これを採点してくれる人がいない、ということが残念。


とはいえ、「これは効果あり」というのを、肌で実感できた。
要約は本当に時間がかかるのだが、少なくとも写経はしばらく続けたい。

新聞を取るでもなく、タダで教材が公開されているだなんて、本当にネット社会というものは便利である。

どちらかといえば、好きなほうである。
学生時代に、学業行事で何度か見ては、感動を覚えた。
にもかかわらず、社会人になって、お金を払って見に行く、といった発想はなかった。

そんな「演劇」というジャンルであるが、たまたまタダ券が手に入ったので、先週土曜日に見に行くこととなった。
結局お金払ってへんやん、ということは、さておき。


場所は伊丹にある「青山円形劇場」というところ。
体育館のように、前方だけに舞台があるのではなく、空間の中心に大きな舞台があり、それが前方へと延びている。
大きな舞台を3方向で取り囲むさまは、どちらかといえばプロレス観戦に来たよう。

公演主の「劇団鹿殺し」という名前は、失礼ながら聞いたことがない。
出演者の名前に目を通しても、さっぱりである。
にもかかわらず、びっちりと席が埋まっているあたり、ただシロウトが組んだ劇団ではないな、ということがうかがえる。


開演。
はじめは、演劇というよりは、ファンタジックな展開。
どんだけ練習したんやろ、と息をのむような、息のあった連携した動き。

そこから、劇がはじまる。
まず驚くのは、舞台の雰囲気。

あるときは駅のプラットフォーム、あるときは葬儀場、あるときは路上。
一旦幕引きをしてセットを変える、なんてことをせずに、だ。
小道具が若干変わるだけ、あとはまわりの演者により、そこの景色がガラリと変わってしまう。
これは本当に驚き。

さらに評価すべきは、場面転換の早さ。
いったん暗転で劇を中断する、なんてことをせずに、場面が変わるときは、常にステージでは誰かが動いている。
さっきまで厚手メイクだった主人公が、ほんの短時間で学生時代に戻る、なんてのもすごい。

登場人物においては、ただただ絶賛するしかない。
どうやったらそんなセリフ間違えずに、2時間近く演技できるの?
それでいて、NGが許されるドラマに遜色しない芝居がくり広げられる。


なんで今まで見に来んかってんやろ?
とにかく期待以上すぎて、すっかりこの劇団のファンになっているほどである。
ただ、今回の劇以来、1年間休養されるらしく、非常に残念。

これを機に、もっと演劇というものを見てやろう。
というほどでもないんだけどなぁ。
でも見ると、やっぱりおもしろいんだなぁ。