自転車が壊れて、徒歩で駅へ向かうことは、新鮮であった。
わずか10分の時間でも、いつもの風景が新鮮に見える。
これであれば、いっそ自転車は使わず、徒歩で通勤してもよいのではないか、とすら思う。
が、新鮮さがなくなり不便さに支配されることなど、目に見えている。
けっきょく翌週月曜の会社帰り、すぐさま自転車屋へ。
片田舎のくせに、20時まで営業していることがありがたい。
今までのように、旅目的で乗るわけではない。
それでも、「ママチャリ」「27インチ」「国産ブランド」というこだわりだけは、捨てられない。
小さい自転車屋で、その条件を見つけることは非常にたやすい。
それでいて、実に数が少ない。
指定した条件で紹介された2台は、いずれも無難すぎるデザイン。
値段は2万円後半と、おおよその予算どおり。
しかし何だろう、まったくもって購買意欲がわかない。
やはり、見た目。
具体的にどんな色・形が好みというものはないながらも、直感的にこれを何年も乗り続けたいとは思えないのだ。
かといって、ここで買わなければ、少なくとも今週は自転車なしで過ごさなければいけない。
いいかげん夜が寒くなってきたし、それは避けたい。
土日も予定が入っていたため、さらに翌週となると辛い。
今こうして迷っているということは、他の店行ってもけっきょく同じような気もする。
しばらく硬直していると、店員さんが口を開いた。
なんでも、今まで売れ残っているものが1台あるとのこと。
何台もの自転車に折り重なり隠れていた自転車を見るや、心がときめいた。
いや、特にめちゃくちゃカッコいいわけではない。
ただ、「これなら買ってよい」と思ったのだ。
何と、チェーンではなく、ベルト仕様である。
そういえば、昔やたら欲しがった時期があったな。
世間でも一時期ムーブメントがおこった気がしたが、いつの間にやら消えたような。
昔は、旅の最中にベルトが切れたら大変という理由で、購入する気はなかった。
が、よくよく考えたら、それはチェーンでも同じ。
普段使いを考えたら、どうせ雨ざらしになるだろうし、そうなったときはさびないベルトのほうが有利。
そして、購入を決定。
値段は4万円と高価ながら、それでも8千円近く割り引いてくれている。
ただ、そのお店へはバイクで行っていたこと、いったんバイクを置いてとりに行くには20分近く歩かないといけないことを考え、車で取りに行くことに。
かつてはバイクを乗せたりもしていたはずなのに、積み込みに四苦八苦。
・・・という過程を経て、はや1か月。
乗り心地は、まぁ普通。
チェーンをベルトにしたからといって、大きな違いを感じない。
こいでいないときの「ジャー」という音がない、くらい。
あと、変速時に音も感触もないので、ちょっと不安になるくらい。
やはり本当の違いを知るには、旅しかない。
1泊で手軽に行ける、琵琶湖一周でもしてやろう。
という気分に、あたたかい時期ならなったんだろうな。
来年の春、ひょっとしてひょっとするとママチャリ旅復帰するかも。