キックボード旅人の日常

キックボード旅人による、旅の話とか日常のこと。

山陰めぐりパス紀行【1日目】

つい先日、神社をめぐったとき、ふと気がついた。
そういえば、今手をあわせたところで、今月は神様がいない。
さい銭箱に投げ入れようとした10円玉を財布に戻したのは、決して惜しかったわけではない。

という言い訳もあり。
もともと、10月に島根へ行きたかったという潜在的欲求もあり。
10月の3連休は、島根~鳥取へ、電車を使った旅行をしてきた。

新幹線と特急の指定席あり、島根~鳥取間は特急も含めて乗り放題で、1万円というのは安すぎる。
そんなおトク感も、今回の旅行のきっかけでもある。


【レンタカー】
新幹線→特急やくもを乗り継ぎ、午後1時に出雲市へ到着。
空の広さは言わずもがな、そんなことより駅前の至るところで、イベントが開催されていて、早くもテンションが高まる。

1日目から2日目の昼までは、レンタカーによる移動。
24時間でわずか2,000円で借りられるというのも、おトクな切符の恩恵である。
しかも、Sクラスといわれる普通車。

ひさびさの普通車は、車間がぜんぜんわからない。
それよりも、オートマ車もひさびさで、いきなり左足でブレーキを踏むという失態。
MT車よりもはるかに運転しやすいはずが、なんとも危なっかしい移動となった。


石見銀山センター】
1時間ほど西に向かい、石見銀山へ。
世界遺産に登録された廃墟は、軍艦島とここの2箇所。
ふだんの廃墟散策ほどの楽しさはないだろうと覚悟しながらも、とりあえず寄ってみた。

石見銀山世界遺産センター」で車を停め、メインの観光スポットまでは歩くこと30分。
途中、どうやら観光スポットまで、送迎バスが出ていたことに気がつく。
ちゃんとセンターで聞くなり、前もって調べていれば、こんなヘマはしなかったのに。
つくづく、計画というものが苦手なことに気がつく。


石見銀山:散策路】
観光スポットは、小さな川をはさんで、両側に散策路がある。
一方は、舗装がされていない獣道。
もう一方は、昔ながらの町並みが残った道。
まずは、前者を進むことに。

途中、わき道にお寺や神社の跡がある。
が、どう見てもただの墓地で、陰気なので寄る気がしない。
そもそも、この峠道を歩いている人が圧倒的に少ない。


石見銀山:清水谷製錬所跡】
やがて到着したのが、「清水谷製錬所跡」。
砦のように、何段にも重なったコンクリートの固まりは、なかなかの存在感。

であるが、いかんせん建物がまったく残っていない。
足場もしっかりしており、危険な場所には原色で「立入禁止」の標識。
これでは、とても廃墟としての魅力を感じない。

コンクリートの固まりを上ると、先には選鉱場跡があるらしい。
ひょっとすると、奥に行けば満足の得られる残骸があるのかも知れない。
獣道を、ひたすら登る。

そしてようやくたどり着いた選鉱場跡は、やはり骨組みしか残っていない。
人があまり立ち寄っていない、という面では満足だが、急勾配の獣道を越えてまでの見返りはない。

そのまま引き返すのもしゃくなので、わき道を歩く。
ここを進むと元の道に戻れる、という確約のない選択である。

やがてアスファルトの道へ出たが、そこには山肌とガードレールがあるのみ。
人はおろか、車も走っていない。
あわててスマホのナビを調べると、方向的には元の道どころか、車を停めた場所までの近道になってそうだ。
ただ、ナビでは道が途絶えていて、本当に続いているのか確証がない。

ここまで来たのだから、引き返せない。
そう思ってしまう性格である。
分単位で沈む太陽に不安感を覚えながらも、ひたすら上り坂を進む。

どれくらい進んだだろう。
いよいよ本格的に、太陽が山肌へと姿を隠した。
ただただ、道はえんえん続いている。
不安感は意識的に感じないようにし、とにかく無心で歩く。

そして久しぶりに、人工物を発見!
展望台になっており、そこから車の置いてある駐車場へ道が続いている。
安堵とともに、展望台から見える風景が、どれほどきれいに映ったことか。


【旅館:小鐡屋】
無事車に戻り、旅館へは19時到着。
さびれた駅のすぐそばにある、一見地味な建物。
しかし奥は広く、2階建ながらも部屋数が多い。

純和風の8畳ほどの部屋に通され、おかみさんがお茶を入れてくれた。
どうやらここは、割烹をメインにしているとのこと。
なのでインターネットでは宿の紹介はしておらず、また割烹が忙しいときは宿泊をキャンセルするそうな。

そんな期待感がふくれあがる割烹は、品数も多く、それこそ1品ずつに食材の味を引き出す工夫があるというか。
一泊二食で9,450円は、お得感が強すぎる。


1日目から、なかなか充実した時間を過ごしてご満悦。
こうなると翌日がまた、楽しみである。